最高峰のダイヤモンド・カッティング・ジュエラーとして歴史に名を刻む「ロイヤル・アッシャー」は、トリリアント・カットやアッシャー・カット(スクエア・エメラルド・カット)など今では広く知られるカットを世に生み出しました。そしてダイヤモンドへのあくなき情熱がもたらしたのが、国際パテントを擁する4種のオリジナルカットです。2024年秋、待望の5種目となるオリジナルカット「ロイヤル・アッシャー・ペアシェイプカット」の登場を前に、その唯一無二の輝きの誕生秘話を振り返ります。

A Story of Eternal Beauty 02
ROYAL ASSCHER CUSHION CUT
ロイヤル・アッシャー・クッションカット

5代目エドワード・アッシャーと6代目マイク・アッシャー。親子が手を取り合い2014年に開発したのが「ロイヤル・アッシャー・クッションカット」です。英国王室の至宝「グラニーズ・チップス」に飾られたクッションカット「カリナンⅣ世」にインスピレーションを得たという、由緒ある輝きの誕生ストーリーをマイク・アッシャー共同代表に尋ねました。

 

──なぜクッションカットを進化させようと考えたのですか?

2つ目の特許を生み出すにあたって、クッションカットを考えたのは自然の流れでした。第一に市場の需要がありましたし、第二に、私たちはそのシェイプそのものに情熱を抱いています。エリザベス女王陛下がもっとも気に入っていたアイテムのひとつが、ブローチとして身に着けられていた「カリナンⅣ世」でした。ロイヤル・アッシャー社がカットを施した後、メアリー王妃へ、そして孫娘のエリザベス女王へと渡った「カリナンⅣ世」と「カリナンⅢ世」を組み合わせたブローチは、愛情をこめて「グラニーズ・チップス」と呼ばれています。

1908年にロイヤル・アッシャーが世界最大のダイヤモンド原石「カリナン」からカットした9つのダイヤモンド(カリナンⅠ~Ⅸ世)のうち、カリナンⅣ世とカリナンⅢ世の2つのダイヤモンドが飾られたグラニーズ・チップス(上:カリナンⅣ世 63.60ct 下:カリナンⅢ世 94.40ct)

──エドワード氏とマイク氏、父と息子がカットの開発に携わったそうですが、お二人はそれぞれどのような役割を担ったのでしょうか。

これはまさにチームワークです。まずは研磨されたクッションカットをリカットすることから始まり、研磨職人に私たちのアイデアを指示して、二人で最終的な仕上がりを判断します。完璧を目指して、互いに刺激し合うのです。

──「カリナンⅣ世」にインスパイアされたそうですね。「カリナンⅣ世」にまつわるすべての文献を調べられたかと思いますが、実際にどのようなものを参考にされたのでしょうか。

「カリナン」に関する資料は社内に保管されていて、私たちはそれを研究しています。私の高祖父がこのダイヤモンドをカットした際の作業工程を調べ、その最終的なカットからファセット配置のインスピレーションを得ました。

──開発プロセスの最初のステップはどのようなものでしたか?

最初のステップはいつも、まず考えを話し合い、マインドマップを作成して、角度を計算することです。図表化し、視覚化していきます。

──通常のクッションカットからどのように、またどのような点を改良したのでしょうか。

「ロイヤル・アッシャー・クッションカット」は、ダイヤモンドに出入りする光を増幅させる特別なファセット・パターンを特徴としているため、ブリリアンスと煌めきが増します。ファセットの配置は、より反射性の高い表面を生み出すため最適化されています。

エドワード氏とマイク氏により開発された、ロイヤル・アッシャー・クッションカット

──開発プロセスにおいてもっとも困難だった局面を教えてください。

ファセットの角度と比率を正しくすることです。ファセットの長さと幅がもっとも重要なのです。

──原石の選択で注意した点はどんなことでしたか?

「ロイヤル・アッシャー・クッションカット」はスクエア・クッションです。そのため「ロイヤル・アッシャー・カット」と同じタイプの原石(正八面体の結晶)を使用しています。共通の原石を使うため、原石選びが容易になりました。もしもクッションが細長ければ、別のタイプの原石を探す必要があったでしょう。

ダイヤモンド原石。至高の輝きを生み出すためには厳選された原石が使用される。

──製品の開発までにはどのくらいの時間がかかりましたか?

いつも9カ月から1年くらいの時間をかけて開発しています。

──「ロイヤル・アッシャー・クッションカット」の美しさや他にはない魅力はどんな点だと考えていますか?

「ロイヤル・アッシャー・クッションカット」は、対称性に何より重きを置いて作られています。ファセットの精緻な配置が、全体の輝きと美的クオリティをもたらしています。

ロイヤル・アッシャー・クッションカットは、強い輝きを放つとともに、丸くカットされた四隅が柔らかく優美な印象。

──現在のカットには満足されていますか?

とても満足しています。
ただし、第二弾となるより細長いバージョンを手がけたいとも考えています。

Text:Aiko Ishii