最高峰のダイヤモンド・カッティング・ジュエラーとして歴史に名を刻む「ロイヤル・アッシャー」は、トリリアント・カットやアッシャー・カット(スクエア・エメラルド・カット)など今では広く知られるカッティングを世に生み出しました。そしてダイヤモンドへのあくなき情熱がもたらしたのが、国際パテントを擁する4種のオリジナルカットです。2024年秋、待望の5種目となるオリジナル「ロイヤル・アッシャー・ペアシェイプカット」の登場を前に、その唯一無二の輝きの誕生秘話を振り返ります。

A Story of Eternal Beauty 03
ROYAL ASSCHER BRILLIANT CUT
ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカット

2015年、5代目エドワード・アッシャーと6代目マイク・アッシャー親子は理想的なラウンドブリリアントカットを生み出します。それは伝統的な58面体のカッティングに16面ものファセットを新たに加えた、74面体からなる「ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカット」の誕生でした。その美しき輝きの物語を、マイク・アッシャー共同代表に語ってもらいました。

──「ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカット」の開発プロジェクトでのお2人の役割はどのようなものだったのでしょうか。

私たちは今も昔も変わることなく、ひとつのチームとして働いてきました。ダイヤモンドカッティングにおけるデザインプロセスとクオリティの追求に重きを置き、美しさや輝きについて、常にそれぞれが完璧に満足するまで話し合いを続けます。

──一般的なラウンドブリリアントカットにはどのような点で改善の余地があり、それをどう進化させたいと思われたのですか?

もっとも美しいダイヤモンドをこの世に送り出すことは「ロイヤル・アッシャー」と、そしてブランドと歩みを共にしてきた私たち家族の伝統です。あらゆるダイヤモンドの形状を前に、私たちはいかにしてその美しさと輝きを高めることができるのか可能性を考えます。そのために、最適なファセットの幅や長さ、比率とは何かを常に研究しています。それがダイヤモンドのシェイプに大きな影響を与えますから。その観点から、一般的なラウンドブリリアントカットは、もっと輝きを高めることができると考えたのです。

ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカットの3Dモデルを作り各ファセットの正確な角度を測定する様子

──100年以上もの間、世界中で選ばれてきた58面体カットを、なぜあえて進化させたのでしょうか。

それは必ずしも正確ではありません。58面体からなる標準的なダイヤモンドカットを進化させようと試みた人たちはこれまでにも存在しました。ですが私たちは、現代の技術と、6世代にわたって培ってきたダイヤモンドに関するあらゆる智慧によって74面体カットという完璧な組み合わせを見出したのです。

──74面体のカットをより明るく輝かせる自信はありましたか?

そうですね。自分を信ぜずして、ヴィジョンを抱くことはできませんから。

ファセットを加え、より明るい輝きを放つダイヤモンドの付加価値とは何か、その答えを導きだす自信がありました。消費者が手に取ったときにそれが伝わるからこそ、私たちが開発を遂げた「ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカット」は良い評価を受けているのでしょう。

──開発に向けてどのような準備をされたのでしょうか? プロセスの最初のステップは何でしたか?

まずはダイヤモンドが改良可能かどうかを判断することから始まります。次にその一般的なダイヤモンドの状態を調べ、どの特性を維持し、どの特性を改良したいかを検討します。もっとも美しいダイヤモンドにするために、ファセットの角度とそれによりどれほど輝きが増すかを数学的に計算するのです。

──どんな点を改良したいと思われたのでしょうか。

ダイヤモンドの輝きと生命力をいっそう磨きあげたいと考えました。光がダイヤモンドの内部でどのように反射し、人間の目に戻ってくるか。ダイヤモンドの外側のガードルに近い部分にファセットを追加し、元のブリリアントカットダイヤモンドの中心部の鮮明さとクリーンな美しさは維持する。それは私たちがたどり着いた、完璧な答えでした。

伝統的な58面体のクラウン側に8面、パビリオン側に8面のファセットを加えた、ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカット

──最大の課題は何でしたか?

ダイヤモンドの美しさを維持しながら、さらに高めるにはどうするかが大きな挑戦でした。競争力を維持するためにも、一般的なダイヤモンドと比較して、カットプロセスでの重量損失を最小限に抑える必要がありました。

──開発にはどれほどの時間がかかったのでしょうか。

半年から9カ月くらいを費やして「ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカット」は完成しました。

──「ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカット」の美しい特徴をあげるとするとなら? 光学的にみて優れている点とは何でしょうか。

私たちが試行錯誤の末に達成したのは、外側に反射するブリリアンス(輝き)の総量を大幅に向上させることです。中心は鮮明で綺麗なままに保ちながら、より明るく煌めき、生命力に満ちたダイヤモンドが生まれました。

──通常のラウンドブリリアントカットと比較すると違いはいかがですか?

よりいっそうの輝きと生命力があるダイヤモンド。それは「ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカット」の最大の魅力と言えるでしょう。

左:ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカット
右:伝統的な58面体のブリリアントカット

──世界ではどのように評価されているのでしょうか。

「ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカット」はいまや世界20カ国以上で販売されており、その輝きに相応しい評価を受け、多くの人々に愛されています。

Text:Aiko Ishii